第7次エネルギー基本計画(案)、 地球温暖化対策計画(案)、GX2040ビジョン(案)に対する意見 NEW!
2025年01月18日
内閣総理大臣 石破 茂 様
経済産業大臣 武藤 容治 様
環境大臣 浅尾 慶一郎 様
第7次エネルギー基本計画(案)、
地球温暖化対策計画(案)、GX2040ビジョン(案)に対する意見
地球温暖化対策計画(案)、GX2040ビジョン(案)に対する意見
神奈川生活協同組合連絡会
代表理事会長 當具 伸一
日本国内のみならず、世界各国から気候変動に伴う甚大な気象災害が頻繁に報告されています。気候変動は激しさを増し、2023年には既に産業革命時から1.48℃の上昇と観測史上最も暑い一年となりました。このままの状況が続けば「温暖化」では収まらず、「沸騰化」の時代が常態化となり、パリ協定で掲げる1.5℃上昇以内に抑えるという目標の達成には、政府目標よりも大幅な温室効果ガス排出削減が必要と指摘されています。
また、神奈川県生活協同組合連合会は、2011年東京電力福島第一原子力発電所事故を契機に「原子力発電に頼らない社会をめざして、省エネルギー再生可能エネルギー推進」の取組みを、消費者・組合員とともに進めてまいりました。
このような観点から、「第7次エネルギー基本計画」「地球温暖化対策計画」「GX2040ビジョン」の策定は特に重要であると考えます。持続可能な社会の実現につながる計画となるよう、以下4点を要望します。
1.原発回帰の姿勢を改め、原発稼働ゼロに向けた工程を具体化すべきです。
(1) 2011年東京電力福島第一原子力発電所事故以降、掲げてきた「原発依存度を可能な限り低減させる」という方針が削除されました。また、原発の建て替えは、これまで廃炉を決めた同じ原発敷地内で限定されていたましたが、同じ電力会社が保有する別の敷地で「建て替え」を行うことを認めています。更に、原発の電源構成計画は2023年度5%の実績に対し、2030年度20~22%、2040年度2割程度と大幅に増加しており、明らかに原発回帰の計画だと指摘せざるを得ません。
(2) 再エネや省エネなど、より経済合理的な代替案がある中、原発回帰で新たな原発を建設するには、計画に10年、建設に10年以上掛かるほか、福島原発事故後新設コストが2~3倍以上になっていることを踏まえれば、その莫大な費用を新たな電源開発のための新制度「長期脱炭素電源オークション」の枠組みを使って電気代に上乗せし、国民に負担を強いるものであり、全く容認できません。
(3) 東京電力福島第一原子力発電所事故から13年が経過しましたが、廃炉作業は困難を極め処理費用は膨れ上がり、今後更に高くなることは間違いありません。原発を運転することにより生ずる高レベル放射能廃棄物「核のごみ」は処理方法も確立していません。地震大国日本において、その安全性が保障されない中、原発回帰の計画には国民的合意は得られないと考えます。すみやかに原発から脱却し、原発稼働ゼロに向けた工程を具体化すべきです。
2.化石燃料から脱却し、再生可能エネルギー拡大に最優先で取り組むべきです。
(1) 気温上昇を押さえるため「先進国は2030年までに石炭火力から脱却が必要である」とG7で確認し、再生可能エネルギーへの転換を進めることが世界的な潮流となる中、日本は2040年以降も石炭火力を温存し、水素・アンモニアの混焼と、CCUS(炭素回収・利用・貯蔵)を推進するとしています。しかし、これらは高コストで、実現可能性の問題やCO2削減効果は殆どないと指摘されています。また、アンモニアは燃焼時NOxを発生させ、大気汚染が危惧されています。
(2) 再生可能エネルギー(以下再エネ)は、これまで「最優先で取り組む」とした文言が削除され、2040年の電源構成で4~5割程度としています。また、「長期脱炭素電源オークション」では、原発や水素・アンモニア混焼する為の火力改修が対象となり、再エネは事実上排除され、再エネの伸びは鈍化しています。
(3) 再エネは既に実用化した技術でコストも安く、ポテンシャルも高く、環境に最も負荷が小さい電源であり、電源における再エネ目標をもっと高めるべきです。化石燃料からすみやかに脱却し、再エネ拡大に最優先で取り組む計画に見直しそのために資金を集中して投入し、現在のエネルギー需給率12%の向上と、化石燃料輸入による年間25~30兆円の国富流出を回避し、国内での経済循環と産業の育成を図ることが重要です。
3.日本政府の温室効果ガス排出削減目標は低すぎます。
(1) 日本政府の温室効果ガス削減目標(2030年までに2013年度比46%削減→2035年までに2013年度比60%削減)は、国際的に合意された5℃目標とは整合性が取れていない計画であり、修正・上乗せが必要です。
(2) 産業革命前から気温上昇を5℃に抑える国際枠組み「パリ協定」の目標実現には、2030年までに2013年度比で51%削減、2035年までに2013年度比で66%削減が必要であり、歴史的に多くの温室効果ガスを排出してきた先進国はさらに高い目標を求められているにも関わらず、政府案では明らかに低すぎます。先進国としての役割を果たす上でも、また、2025年2月に国連に提出するNDC(温室効果ガスの排出量削減目標)との関係においても国際的に合意された1.5℃目標との整合性がとれた計画に上方修正すべきです。
4.国民不在の気候・エネルギー政策形成プロセスは問題です。
全ての国民生活に大きな影響を与える気候・エネルギー政策であるにもかかわらず、経産省主導による一部産業の利益を優先していると指摘せざるを得ない政策が、国民不在の中で決定される政策形成プロセスは民主主義国家として問題です。国レベルでの「気候市民会議」など、国民各層の意見を広く聴き、政策に反映させる仕組みの導入を求めます。
以上