現行の「SDGs実施指針」が改定されるにあたり、協同組合の位置付けがこれまで以上に高められています。日本協同組合連携機構(JCA)は、パブリック・コメントを提出しました。

2019年12月07日

SDGsに関する取り組みを総合的かつ効果的に推進することを目的として、2016年5月20日にSDGs実施指針が策定されました。この実施指針は、日本が2030アジェンダの実施にかかる重要な挑戦に取り組むための国家戦略として位置付けられているものです。

<現行のSDGs実施指針概要>

ビジョン
「持続可能で強靱,そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の統合的向上 が実現された未来への先駆者を目指す。」

実施原則
①普遍性、②包摂性、③参画型、④統合性、⑤透明性と説明責任

フォローアップ
2019年までを目処に最初のフォローアップを実施。

【8つの優先課題と具体的施策】

①あらゆる人々の活躍の推進
■一億総活躍社会の実現 ■女性活躍の推進 ■子供の 貧困対策 ■障害者の自立と社会参加支援 ■教育の充実

 

②健康・長寿の達成
■薬剤耐性対策 ■途上国の感染症対策や保健システム 強化、公衆衛生危機への対応 ■アジアの高齢化への対応

 

③成長市場の創出、地域活性化、 科学技術イノベーション
■有望市場の創出 ■農山漁村の振興 ■生産性向上 ■科学技術イノベーション ■持続可能な都市

 

④持続可能で強靱な国土と 質の高いインフラの整備
■国土強靱化の推進・防災 ■水資源開発・水循環の取組 ■質の高いインフラ投資の推進

 

⑤省・再生可能エネルギー、気候変動対策、 循環型社会
■省・再生可能エネルギーの導入・国際展開の推進 ■気候変動対策 ■循環型社会の構築

 

⑥生物多様性、森林、海洋等の 環境の保全
■環境汚染への対応 ■生物多様性の保全 ■持続可能な 森林・海洋・陸上資源

 

⑦平和と安全・安心社会の実現
■組織犯罪・人身取引・児童虐待等の対策推進 ■平和構築・復興支援 ■法の支配の促進

 

⑧SDGs実施推進の体制と手段
■マルチステークホルダーパートナーシップ ■国際協力におけるSDGsの主流化 ■途上国のSDGs実施体制支援

 

11月8日、政府SDGs推進本部幹事会は、「SDGs実施指針改定案(骨子)」を発表し、11月11日~25日にかけて、パブリック・コメントを募集しました。改定案(骨子)では、協同組合について、以下のとおり、今まで以上に位置付けられています。

政府SDGs推進円卓会議の構成員として「各地域での行動の具体化にとって重要な役割を果たす、地方自治体や協同組合の代表を加えるなど体制をより充実させること」を検討する(改定案(骨子)P4~5)。「(3)ステークホルダーの役割」の「新しい公共」の箇所で、「協同組合をはじめ、地域の住民が共助の精神で参加する公共的な活動を担う民間主体が、各地域に山積する課題の解決に向けて,自立と共生を基本とする人間らしい社会を築き、地域の絆を再生し、SDGsへ貢献していくことが期待される」(同P6)。>

11月25日、日本協同組合連携機構(JCA)は、改定案(骨子)における、①政府における推進体制等について、②優先課題とアクションプラン等について、以下のパブリック・コメントを提出しました。

SDGs達成に向けた政府としてのこれまでの取り組みに敬意を表します。さらに、11月8日付けSDGs実施指針改定案(骨子)(以下、改定案骨子という)は「あらゆる分野のステークホルダーとの協同的なパートナーシップの下、達成年である2030年を意識しながら、今後4年間でより一層本格的な行動を加速・拡大し、国内外においてSDGs実現に取り組んでいく」としています。政府のこうしたリーダーシップ発揮に期待するとともに、協同組合としても引き続きSDGs達成に寄与して参ります。
以下、この間の協同組合の取り組みを踏まえ、意見を述べさせていただきます。

1. 政府における推進体制等について

  • 改定案骨子は、SDGs推進円卓会議について、「各地域での行動の具体化にとって重要な役割を果たす地方自治体や協同組合の代表を加えるなど体制をより充実させること」等を検討するとしています(5頁)。協同組合は全国各地で一次産業、消費生活、中小企業など幅広い分野において、「持続可能な地域づくり」に向けた取り組みを積み重ねており、推進円卓会議の充実強化に寄与できるものと考えます。
  • さらに、「新しい公共」の役割として、「協同組合をはじめ、地域の住民が共助の精神で参加する公共的な活動を担う民間主体が、各地域に山積する課題の解決に向けて自立と共生を基本とする人間らしい社会を築き、地域の絆を再生し,SDGsへ貢献していくことが期待される」(6頁)としています。政府や地方自治体が諸施策を立案する際は、協同組合や住民等の意見を一層反映いただくことが、SDGsに貢献していくうえで必要と考えます。
  • 改定案骨子は、本年9 月開催のステークホルダー会議に言及し、同趣旨の会議開催を地方も含め検討するとしています(5頁)。少子高齢化・人口減少が一層進み地域を支える力が弱まる中、中央・地方の多様な意見を取り入れることは必要と考えます。
  • 改定案骨子は、SDGs実施施策が分野横断的・省庁横断的性格を持つこと、民間との連携においてもリーダーシップが必要なことから、「SDGs実施体制の更なる整備に努めていく」(4頁)としています。2030年まで時間が少ないことから、実施体制整備の検討は早急に必要と考えます。とくに、各省庁が所管する「地方創生」「地域循環共生圏」「地域共生」などの政策はSDGsとの関係も深く、「統合性の原則」のもと一体に行われるべきと考えます。
  • 改定案骨子は、「実施指針の取組状況の確認(モニタリング)見直し(中長期的な観点からの フォローアップとレビュー)」「SDGsグローバル指標に関するデータの収集と分析進捗状況の把握と それに基づいたSDGs達成度の評価」(4頁)を重点課題に挙げています。透明性と説明責任はSDGsの取り組みの原則であり、評価手法の確立・改善は早急に必要と考えます。

2. 優先課題とアクションプラン等について

  • 1のあらゆる人々が活躍する社会の実現に関わって、我が国における貧困・格差の解消について明確に位置付けるとともに、ILO 100 周年創設記念宣言で触れているディーセント・ワークを実現していくこと。
  • 3の地方活性化に関わって、地産地消や国産消費の拡大を着実に進め持続可能な農林漁業・地域社会を築くため、関係省庁の連携のもと、食農教育を推進するとともに、教育関係者や業界関係者・団体・企業等による幅広いネットワークを構築すること。
  • 5の循環型社会、6の環境保全に関わって、①気候変動の緩和は喫緊の課題であり脱炭素社会の実現に向け省エネルギーや再生可能エネルギーの普及を強化すること。 ②海洋に流出するプラスチック低減のためには、廃プラスチックをはじめ家庭ゴミの分別の一層の徹底が必要であり、そのための住民広報や教育を徹底すること。 ③森林保全には住民の幅広い参加による「豊かな森づくり」が必要であり、各地で行なわれている事例を収集し普及すること。

 

「持続可能な地域のよりよいくらし・仕事づくり」を設立趣旨とする日本協同組合連携機構(JCA)は、SDGsへの取り組みをこれまで以上に強化することで、国内の協同組合の取り組みをサポートし、社会へアピールします。

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