エネルギー基本計画見直しに関する意見
2021年03月03日
経済産業大臣
梶山 弘志 様
エネルギー基本計画見直しに関する意見
神奈川県生活協同組合連合会
代表理事会長 當具 伸一
2011年3月、東京電力福島第一原子力発電所事故から10年目の節目を迎えました。東日本全体が壊滅する可能性すらあった大惨事を経験し、多くの国民が原子力発電に依存する必要のない社会の実現を望みました。神奈川県生活協同組合連合会は、「原子力発電に頼らない社会をめざして、省エネルギー再生可能エネルギー推進」の取り組みを、消費者・組合員とともに進めてまいりました。
また、持続可能な社会の実現に向け、2018 年度にIPCC が「1.5℃特別報告書」で「2050 年のCO2 排出量を実質ゼロにする必要があること、2030 年には2010年比で約45%削減が求められること」を提起したように、気候変動対策の強化は焦眉の課題です。2020 年からのパリ協定本格運用開始や、2020 年10 月の菅首相による「2050 年カーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ化)」発言などを踏まえれば、2050 年カーボンニュートラルの実現に向けて、今回のエネルギー基本計画の見直しは特に重要なものになると考えます。
上記を踏まえ、エネルギー基本計画の見直しにあたり、持続可能な社会の実現につながる計画となるよう、下記6点を要望します。
記
1.エネルギー使用量の大幅削減を目指す計画とし、省エネルギー推進のための施策を強化してください。
電力需要は東日本大震災以降減少傾向が続いており、今後もさらなる減少が続くと見込まれます。また、2050 年カーボンニュートラルの実現に向けては、省エネ施策の一層の促進が不可欠です。次期エネルギー基本計画は、これらを踏まえ、エネルギー使用量の大幅削減を目指す計画とすべきです。
加えて、省エネの一層の進展のために、住宅用太陽光発電や高断熱住宅の普及、AI・IoT を活用したエネルギー利用のスマート化など、より効率的なエネルギー利用とともに地域経済の活性化にも資する施策を強化してください。
加えて、省エネの一層の進展のために、住宅用太陽光発電や高断熱住宅の普及、AI・IoT を活用したエネルギー利用のスマート化など、より効率的なエネルギー利用とともに地域経済の活性化にも資する施策を強化してください。
2.原発稼働ゼロに向けた工程を具体化するべきです。
2020年12月に公表された政府の「グリーン成長戦略」では、原発について、「可能な限り依存度を下げる」としつつも、「最大限に活用する」と表現され、次世代炉の開発などについても言及されています。また、2020年7月以降の「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」の議論においても、「原発再稼働も加速化が求められる」等、原子力発電利用に積極的な意見が多く見受けられます。
東京電力福島第一原子力発電所の事故が未だ収束しないばかりでなく、使用済み核燃料や核廃棄物の処理方法も確立していません。そのような中、原子力発電所の再稼働についてはさまざまな議論が飛び交い、国民的な合意に至っていないと考えます。こうした状況において、新増設・再稼動を行うべきではありません。原発稼働は将来的にゼロを目標とし、その工程を具体化するべきです。
東京電力福島第一原子力発電所の事故が未だ収束しないばかりでなく、使用済み核燃料や核廃棄物の処理方法も確立していません。そのような中、原子力発電所の再稼働についてはさまざまな議論が飛び交い、国民的な合意に至っていないと考えます。こうした状況において、新増設・再稼動を行うべきではありません。原発稼働は将来的にゼロを目標とし、その工程を具体化するべきです。
3.再生可能エネルギー主力電源化に向け、2030年の再生可能エネルギー導入目標は国際的水準である50%以上とするべきです。
政府の「グリーン成長戦略」では、2050年の電源構成比率案の参考値として、「自然エネルギー5~6割、原子力と火力で3~4割、水素とアンモニアで1割」が示されました。しかし、IPCC 特別報告書は、1.5℃目標を達成するシナリオとして、2030 年の時点で世界の電力の48%から60%を再生可能エネルギーで供給することを想定しており、「自然エネルギー5~6割」は、国際的に見れば「2030 年」の目標水準です。
日本においても太陽光・風力などの発電コスト低下により、ここ数年国の目標を上回る形で再生可能エネルギー導入が進展していること、再生可能エネルギーには化石燃料の輸入が不要になることや、緊急時の分散型電源、地域経済の活性化への寄与・雇用創出など多くのメリットも期待されます。
以上のことから、2030年の再生可能エネルギー導入目標は50%以上とすべきです。
日本においても太陽光・風力などの発電コスト低下により、ここ数年国の目標を上回る形で再生可能エネルギー導入が進展していること、再生可能エネルギーには化石燃料の輸入が不要になることや、緊急時の分散型電源、地域経済の活性化への寄与・雇用創出など多くのメリットも期待されます。
以上のことから、2030年の再生可能エネルギー導入目標は50%以上とすべきです。
4.火力発電については、石炭火力は2030 年ゼロを目指すべきです。
日本における温室効果ガス総排出量の4 分の1 が石炭火力発電所からの排出であることを考えれば、「パリ協定の長期目標と整合」をとりながらこの稼働を持続させることは現実的ではありません。さらに、ESG投資(従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のこと)の進展の中で、石炭をはじめ化石燃料産業からの投資撤退の動きが世界的に加速しています。また、パリ協定の目標実現のため、欧州各国をはじめ先進国の多くが、2030年までの石炭火力からの脱却を目指しています。さらに、政府の「グリーン成長戦略」でも強調されているCCS(CO2回収・貯留)付き石炭火力発電所については、現状では実用化そのものが見通せない状況です。
こうした状況を踏まえれば、石炭火力発電所の新設は高効率発電所を含め行わず、2030 年ゼロを目指し、具体的な段階的廃止計画を立てるべきです。当面の調整力電源としては、天然ガスの安定調達を確保しながら、石炭火力から天然ガス火力へのシフトを図るべきです。
こうした状況を踏まえれば、石炭火力発電所の新設は高効率発電所を含め行わず、2030 年ゼロを目指し、具体的な段階的廃止計画を立てるべきです。当面の調整力電源としては、天然ガスの安定調達を確保しながら、石炭火力から天然ガス火力へのシフトを図るべきです。
5.カーボンプライシングなど経済的手法を積極的に検討すべきです。
日本では、CO2 排出量に応じた税率を課す税制として、地球温暖化対策税が導入されていますが、炭素税導入国と水準比較した場合、税率は他国に比べて非常に低いことが指摘されています。炭素税をはじめとしたカーボンプライシング(CO2排量に応じたコスト負担)などの経済的手法を通じて温室効果ガスの「見える化」を行い、温室効果ガスを排出しない商品やサービスの開発・普及を促進することで、消費者が脱炭素化に資する商品・サービスを選択できる環境整備を進めるべきです。
6.エネルギー基本計画に幅広い国民の声を反映させてください。
IPCCの「1.5℃特別報告書」では、気候変動は、すでに世界中の人々、生態系及び生計に影響を与えているとし、地球温暖化を1.5℃に抑えるために、社会のあらゆる側面において前例のない移行が必要であると指摘しています。
この見地から、エネルギー基本計画の策定・実践にあたっては、幅広い国民の声を反映させ、国民的な取り組みとして進める必要があると考えます。とりわけ2050 年カーボンニュートラルの実現に向けたエネルギー基本計画の検討という趣旨からすれば、将来世代の参加が重要です。また、気候変動問題に対し提言を重ねてきた環境団体の知見も有効であり、検討に際しては若い世代や環境団体の実質的参加の場を確保するなど、ステークホルダーの幅を広げるべきです。また、脱炭素社会の構築に向けては、消費者・生活者による日常的な消費行動の転換が欠かせないことから、消費者の理解促進や主体的な消費行動につながるような形で計画内容の周知・広報を進めてください。
この見地から、エネルギー基本計画の策定・実践にあたっては、幅広い国民の声を反映させ、国民的な取り組みとして進める必要があると考えます。とりわけ2050 年カーボンニュートラルの実現に向けたエネルギー基本計画の検討という趣旨からすれば、将来世代の参加が重要です。また、気候変動問題に対し提言を重ねてきた環境団体の知見も有効であり、検討に際しては若い世代や環境団体の実質的参加の場を確保するなど、ステークホルダーの幅を広げるべきです。また、脱炭素社会の構築に向けては、消費者・生活者による日常的な消費行動の転換が欠かせないことから、消費者の理解促進や主体的な消費行動につながるような形で計画内容の周知・広報を進めてください。
以上