[神奈川県生協連] この2月に行われた米国の臨界前核実験に抗議する
~米国は核兵器廃絶を願うヒバクシャの声と世界の声を聞け~
神奈川県生活協同組合連合会
代表理事会長 當具 伸一
米核研究機関のローレンス・リバモア国立研究所は5月24日、「エディザ」と名付けられた、プルトニウムを用い、核爆発を伴わない臨界前核実験を2月に西部ネバダ州の施設で実施したと発表しました。米国が臨界前核実験を行うのは2017年12月以来で29回目にもなります。トランプ政権では2回目です。
トランプ政権は、去年2月に新たな核戦略を発表し、ロシアや中国に対抗するため、核兵器を「使える兵器」として役割拡大を目指す方針を表明し、実験などを通じて核戦力の近代化を進めるとともに、「低出力核」と呼ばれる「威力を抑えた=使い勝手の良い」核兵器の増強などを進めています。今回発表された実験は、2月の2回目となる米朝首脳会談の直前に行われており、北朝鮮に非核化を迫る一方、自らは核兵器の性能向上を進めている米国の姿勢は、朝鮮半島や東アジアの非核化そして核兵器廃絶を願う世界の世論に逆行するものです。
米国は2017年2月の、中長期の新たな核戦略「核態勢の見直し」を発表し、「核なき世界をめざす」とした前政権からの方針転換を打ち出し、核戦力の近代化と増強が進められています。核安全保障局(NNSA)は、この2月、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に搭載する低出力核弾頭の製造を開始し、10月には海軍に引き渡す予定です。
国連では、1994年の第49回総会から25年連続して核兵器廃絶決議を採択しています。この間の決議では、核兵器の使用がもたらす悲惨な人道的結末を憂慮し、全ての国が「核兵器なき世界」の実現をめざしてさらなる措置を講じる必要性を訴えています。2017年7月には、核兵器禁止条約が122カ国の賛成を得て採択され、現在条約の発効に向かっています。
世界のこの願いを真摯に受け止めるべきです。
私たちは、核兵器廃絶と被爆者援護を共通の願いとして、被爆者とともに平和を求める活動をすすめています。ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名(ヒバクシャ国際署名)は、神奈川県内33県知事・市町村長も署名され、累計941万5,025筆(4月末現在)となり、NPT運用再検討会議第3回準備委員会議長に届けられました。
核兵器を廃絶し恒久平和を実現することは、戦争被爆国日本国民の悲願であり、また基地県でもある神奈川県民の強い願いです。
私たちは、世界で最初に核兵器を人類の頭上で爆発させた米国こそが、世界に先駆けて核兵器廃絶の行動に立ち上がる責務があると考えます。原爆は人類の歴史を終わりにしかねないものであり、人類と原爆とは共存できません。
今回の臨界前実験に強く抗議するとともに、「核兵器の使用と威嚇は国際法に違反する」とする1996年の国際司法裁判所の勧告的意見を真摯に受け止め、核実験および核開発につながるすべての行為を中止し、米国こそが「核兵器のない平和な世界の実現」に向けて明確な行動を率先して取ることを強く求めます。