[神奈川県消団連] 家庭用品へのマイクロカプセルの使用規制を求めます
2019年05月28日
神奈川県消費者団体連絡会
事務局長 小林 正明
マイクロプラスチックによる海洋汚染問題が深刻化しています。マイクロプラスチックの中でも、化粧品や歯磨き剤などに含まれるマイクロビーズは削減の取り組みが始まっていますが、マイクロカプセルは社会的にまだ問題が認知され始めたばかりです。例えば柔軟仕上げ剤では、香りを持続させるためにマイクロカプセルが使われており、環境中でカプセルが破壊される仕組みとなっています。ところが、環境中で破壊されたカプセルからは中味の香りだけでなく、カプセル壁材のプラスチック破片など有害物質が空気中に飛散し、それを吸い込んで健康被害を訴える人が続出しています。また、飛散したプラスチック破片は、土壌や海洋のプラスチック汚染の原因となっています。
日本がマイクロカプセル規制をはじめとする環境問題の対応において世界をリードする政策を採ることを願い、以下要請します。
要請する主旨
- 「プラスチック資源循環戦略」に、マイクロカプセルの削減計画を盛り込んでください。まずは、柔軟仕上げ剤など、家庭用品へのマイクロカプセルの使用は禁止してください。
- 「海洋漂着物処理推進法」並びに「プラスチック資源循環戦略」におけるマイクロプラスチック対策には、マイクロカプセルが含まれることを明記してください。
要請の理由
- マイクロプラスチックは、直径5ミリメートル以下の微細なプラスチックごみです。マイクロプラスチックには、マイクロビーズ、マイクロカプセルなど意図的にマイクロサイズで製造される「一次的マイクロプラスチック」と、大きなサイズで製造されたプラスティック製品が、マイクロサイズになる「二次的マイクロプラスチック」があります。
- マイクロビーズについては削減の取り組みがすでに開始されています。しかしマイクロカプセルは、「プラスチック資源循環戦略」や「海洋漂着物処理推進法」において、マイクロプラスチックの中に含まれるかどうか明示されていません。
欧州化学物質庁(ECHA)は2019年1月に、欧州域内における「意図的に製品に入れられたマイクロプラスチックの規制に関する提案」を欧州委員会に提出し、その中にはマイクロカプセルが含まれています。洗剤などに含まれる香りマイクロカプセルについても、5年の猶予を設けるものの、禁止すべきという姿勢を打ち出しています。 - 柔軟仕上げ剤や合成洗剤、制汗剤、消臭・芳香剤などには、香り成分を閉じ込めるプラスチック(合成樹脂)製のマイクロカプセルが含まれています。世界の香料のマイクロカプセルは、合成洗剤の10~20%、柔軟仕上げ剤の約60%(香り付きビーズ等も含む)に使用されていると報告されています。また、カプセルの壁材としてプラスチックが使用されていますが、EU域内ではメラミン樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアクリレートなどが使用されています。日本もメラミン樹脂、ポリウレタンなどが多用されています。
- 柔軟仕上げ剤に使用されたマイクロカプセルは、洗濯物に付着して空気中でカプセルが破れることにより香りを放つ仕組みですが、同時にカプセル壁剤であるプラスチック原料が環境中に飛散します。環境中に放出されたマイクロカプセルは、マイクロプラスチックと同様、降雨などにより河川を通じて海に流入し、土壌にも残留します。また空気中に浮遊し、体内に入り人体に悪影響を及ぼすことが懸念されます。
現在世界のマイクロカプセル市場は、医薬品や農薬など広い分野に及んでおり、家庭用品への使用も拡大しています。
医薬品などやむを得ない場合を除き、家庭用品へのマイクロカプセル使用を規制してください。
マイクロカプセル使用を放置することは土壌や海、空気などの環境、そして生物や人体のプラスチック汚染をますます深刻化する恐れがあります。