第4次神奈川県食育推進計画(素案)に関する意見を提出しました(県消団連)

2023年01月13日

神奈川県消費者団体連絡会
事務局長 庭野 文雄

神奈川県において、食育基本法及び国の食育推進基本計画にそって、平成30年に「第3次神奈川県食育推進計画」を策定し、関係機関、団体等と連携しながら、「食育」を県民運動として取り組んできたことに対して評価をいたします。

その上で、今回示された「第4次神奈川県食育推進計画」素案に対して、いくつかの点について検討を求めたく意見を述べます。

 

1.「食」の位置づけについて~「未病」との関連で

(該当箇所:P2 17行目ほか)

本計画策定の趣旨において、「『食』は未病を改善するための重要な要素であり、県民一人ひとりが食に関する理解を深め、健全な食生活を実践することが、生涯を通じた心身の健康につながります」と記述されています。

神奈川県として「未病」の改善に力点を置いていることは理解しているところですが、「食」について説明する際に「未病を改善するための重要な要素」だとする記述を最初に持ってくるのは唐突感を免れず、また「食」の概念を狭くとらえてしまいかねないと考えます。

むしろ、「『食』は国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成に不可欠な要素であり、県民一人ひとりが食に関する理解を深め、健全な食生活を実践することが、生涯を通じた心身の健康につながります。」としたうえで、「神奈川県として重点的に取り組みを進めている『未病』を改善するためにも重要である」と付け加える形で記述をしていただいた方が受け止めやすいと考えます。

 

2.「みんなでごはんを食べることの大切さ」の呼びかけについて

(該当箇所:P5 下から3行目)

「家庭における食育を推進するため」、「子どもの夏休みにあたり家族で食事をする機会が増える一方で、生活が不規則になりやすい8月を『かながわ食育月間』と位置づけ」ると記述されています。

しかしながら、実際には、子どもの夏休みにあたり家族で食事をする機会が増える家庭ばかりではなく、親が働いている家庭などでは子どものみの個食が増える家庭も少なくないと考えています。配慮のあるバランスの取れた記述をお願いします。

 

3.朝食欠食割合の増加に関して

(該当箇所:P10 1行目から)

男女ともに朝食欠食の割合は高くなっています。報告書に記載のとおり、朝食を食べないと、午前中は体温が上がらないため体が目覚めず、脳のエネルギーが不足しているため週直や記憶力の低下につながります。

7-14歳の義務教育期間中の子どもにおいても増加しており、家庭では対応できない場合もあるものと推測されます。施策について検討が必要だと考えます。

 

4.神奈川県の農林水産業について

(該当箇所:P17)

神奈川県の農林水産業の現状について紹介され、「生鮮食料品を中心に高い生産力を維持し、消費者に提供されています」と記述されています。しかし、第3次計画時と比較し、生産量は、野菜で255万人分から234万人に、魚介類で73万人分から62万人分に減少しています。

「持続可能な食」が食育にとっても大事なテーマであることから、生産量として減少していることについては記述してもらうようにお願いします。

その上で、そのことを踏まえた施策を組みたてることが大切だと考えます。

 

5.食品ロスにかかる意識

(該当箇所:P18)

購入した食品を食べないまま捨ててしまうことがあると回答した人の割合が、第3次計画時と比較して増加しています。

近時、取り扱いが増加しているフードバンクの活動は食品ロス削減にも寄与するものです。食育、そして食品ロス削減の取組として位置づけ、情報提供と啓発をお願いします。

 

6.「持続可能で健康的な食事に関する指針」について

(該当箇所:P22 下の囲み記事)

「持続可能で健康的な食事に関する指針」についての説明が、すぐ上の【横断的視点】の説明だと勘違いしてしまいますので、順序を変えるか、スペースを空けていただいた方がよいと考えます。

 

7.指標及び目標値について

(該当箇所:P23の表の⑬⑭⑮)

(1)学校給食における、持続可能な食を支える食育の指標として、地場産物、国産物の扱いを挙げていますが、これに加え、学校給食における環境に配慮した農林水産物の扱いについても何らかの指標を設けていただきたい。(例:学校給食における有機農産物、農薬や化学肥料の削減に取り組んでいる農産物の利用を現状値から維持向上した市町村の割合)
(2)食育の推進にとって、学校給食は大変重要な役割を持つものと考えます。指標⑬学校給食における地場産物を使用する割合、⑭学校給食における国産食材を使用する割合について、市町村の割合としたのでは実態が分からないことから、学校数にすることを要望します。

 

8.子どもの居場所づくりと連携した食育の推進

(該当箇所:P36 1行目)

(1)地域での食育の推進をテーマとして県の取組として、「子どもの居場所づくりと連携した食育の推進」が項目としてあげられており大切な課題と考えます。

取り組みの中に、フードパントリーなどフードバンクに支援を受けに来る人たちが、その場で食生活改善推進員による食生活改善相談を受けることができるよう、フードバンクと食生活改善推進団体・推進員をつなぐしくみを作ってほしい。(食費に制限があるなかでも健康な体を維持するためにどのような食生活が望ましいのかといったことにつて気軽にアドバイスがもらえる場が必要だと考えます。)
(2)あわせて、高齢単身世帯の増加をふまえると、子どものみではなく地域における「居場所」づくりとそれに対する連携が必要だと考えます。

 

9.食を取り巻く環境への理解促進

(該当箇所:P47)

食品ロス削減に関する普及啓発の内容として、フードバンクの啓発と情報提供を位置付けることを要望します。

 

10.県民、団体、事業者等に期待される取組

(該当箇所:P49)

「できるだけ地場産物を購入することにより、県内農林水産業・農林水産物加工業の理解や県内の農林水産物の生産につながる地産地消を推進する」と記載されていますが、「環境配慮」についても必要だと考えます。「できるだけ地場産物や環境に配慮した方法で生産・製造された食品を購入することにより、・・・・農林水産物の持続可能な生産に・・・」と追記をお願いします。

 

以上