[神奈川県生協連] 第57回全国消費者大会 開催報告

2019年05月20日

第57回全国消費者大会を2019年3月15日(金)に開催しました。全国消費者大会は、団体による実行委員会が企画を検討し、資金を持ち寄り、当日運営をすすめました。ご協力いただいた団体には、心より御礼申し上げます。

今回は1日開催でしたが、4つの分科会と全体会に、のべ335名の参加いただきました。

各分科会・全体会の概要は以下の通りです。

消費者政策分科会

テーマ つながるって大事?!~地域で見守るくらしの安心~
日時 3月15日(金)13:00~16:30
会場 主婦会館プラザエフ 7階カトレア
参加 72名

①報告「消費者安全確保地域協議会はなぜ必要なのか」

待鳥三津子さん(消費者庁消費者教育・地方協力課 政策企画専門官)


原野商法の二次被害にあった高齢夫婦の事例は、業者を信じてしまい、被害にあっている自覚がない、 家族と連絡が取りにくい、自宅を担保にあらたな借金をさせられるなどの状況に陥っていました。高齢者の被害は年々増加しています。被害防止のためにも、地域での見守りの仕組みづくりが求められます。

②報告「特殊詐欺・消費者被害防止の地域での取り組み」

岩田美奈子さん(一般社団法人シニア消費者見守り倶楽部代表理事)

主な活動として、「自動通話録音機貸与」、神奈川県警の「迷惑電話防止機能付き固定電話利用促進」の取組応援、社会福祉協議会・地域防犯連絡所・地域サロン等での講話・講座の開催を行っています。消費者被害を未然に防止するための啓発活動を地域の様々な団体と連携し、特殊詐欺認知件数・被害額ともに減少する効果を生んでいます

③講演「地域コミュニティの現状と課題~消費者の安全・安心確保のためのつながり~」

日野勝吾さん(淑徳大学コミュニティ政策学部准教授)

地域コミュニティは、価値観の多様化、プライバシー意識の高まり、少子高齢化、担い手不足など、コミュニティの衰退につながる要因もあり、どのように再生するかが課題となっています。コミュニティが持続する条件は、なんとなくみんな顔見知り、思いがけず面白いことが起こったり、外の人間を迎えやすくなっていたり、ゆるい関係の「居場所」づくりと「おせっかい」が必要ではないでしょうか。地域コミュニティに積極的に参画できる環境整備として、働き方を変える、やりがい、包容力、やわらかく・しなやかな組織運営を考えたいです。

◎参加者交流「自分たちは何ができるか」をテーマに、交流し発表しました。

 

食分科会

テーマ この表示信じられますか?~子どもたちにも忍び寄る健康サプリ~
日時 3月15日(金)13:00~16:30
会場 主婦会館プラザエフ 5階会議室
参加 50名

いま、健康食品の利用者の低年齢化が問題になっています。また、法令に抵触するような健康食品の広告が後を絶ちません。今回の食分科会には、消費者庁表示対策課の田中誠さん、公益社団法人日本広告審査機構(JARO)審査部の野崎佳奈子さんをお招きし、行政の監視に関する最新動向や賢い広告の見方などをお話しいただきました。特に野崎さんの健康食品クイズは好評でした。このほか、食分科会実行委員の蓮尾隆子さん(家庭栄養研究会)より、子ども向け健康サプリメントを購入する女子中学生の事例やその商品パッケージについての報告、大道不二子さん(NACS)からサプリメントについての相談事例全般について報告がありました。グループ討議では、「健康食品に対するイメージ」「今日のお話で、周りの人に伝えたいと思ったこと」について交流しました。「健康食品は高価なイメージ」「健康食品よりも、バランスのとれた食事を心がけたい」等の意見が出されました。

 

社会保障分科会

テーマ 広がる貧困・格差、このままで良いのか!!
日時 3月15日(金)13:00~16:30
会場 主婦会館プラザエフ 3階主婦連会議室
参加 46名

日本社会に貧困と格差が拡大している最中、政府2019年10月に消費税率を10%に引き上げると言います。それは私たちの生活不安を増幅させています。「社会保障に使われるなら、仕方がない」と考えている人も多い中、社会保障の充実、消費税増税をどうとらえたらよいのかを一緒に考えましょうと社会保障分科会を企画しました。

分科会では2人の講演者から各々問題提起をしていただき、それに沿って質疑応答、意見交換を行いました。 井上伸さん(日本国家公務員労働組合連合会中央執行委員)からは、アベノミクス以来の経済・社会状況、アベノミクスがもたらしたもの、拡大した貧困と格差の実相について、グラフや図表を多用し、わかりやすく解説をしていただきました。

佐々木寛さん(新潟国際情報大学教授)は、今の日本は、見たいものだけを見る「真実」からの逃避行動や「今だけ、金だけ、自分だけ」の単なる「消費者」として慣らされている社会だと警告。観客民主主義から参加民主主義へ移行しようと訴えられました。

アンケートでは、「格差の真実が良くわかった」「多くの気づきがあった」「私たちがどうあるべきか、改めて強く問題意識」が残ったなどの感想が寄せられました。

 

環境分科会

テーマ 海の豊かさを守ろう ~改めてプラスティックゴミによる海洋や生態系への影響を学び、私たちができることを考えよう~
日時 3月15日(金)13:00~16:00
会場 主婦会館プラザエフ B2クラルテ
参加 61名

はじめに行政の取組みとして、金子浩明さん(環境省)より、プラスチックごみによる世界規模の海洋汚染の状況や、ゼロエミッションを目指す施策を示す「プラスチック資源循環戦略(案)」について、消費者・自治体・NGO・企業などの幅広い主体が、ひとつの旗印の下に連携してとりくむための「プラスチック・スマート キャンペーン」について説明いただきました。

次に環境団体の取組として、小島 あずさ さん(JEAN)より、プラスチック容器の利便性から全世界で使用が進む一方、排出されたプラスチックごみの破片化が進みマイクロプラスチックとなり、回収が不可能になっていること、私たちは当事者意識を持ち、回収活動の促進とともに、発生抑制・環境教育の普及・啓発も必要である、とお話いただきました。

続いて、事業者の取組みとして、窪田 とも子 さん(ラッシュジャパン)より、LUSH(イングランドで設立された化粧品製造・販売会社)の「世界の課題はビジネスにおいても課題である」との考えから開始された、パッケージフリー(ネイキッド)の商品展開のお話や、空容器回収とリサイクル・輸送時の緩衝材廃止・オフィスへのペットボトル持込禁止などの、多彩な取り組みについて紹介いただきました。

最後に、講師(環境省金子さんに代わり丸山 祐太郎さんにご対応いただきました)の方々と参加者がそれぞれ車座になり、質疑応答、意見交換を行いました。

会場後方では、①「東日本大震災に起因した漂流物と海ごみ問題」②「VOC(揮発性有機化合物)って何?」③「森林を育む紙製飲料容器(紙カート缶)見本」④「間伐材マーク認定商品」⑤「ラッシュのネイキッド商品・風呂敷(古布)他」を展示しました。

 

全体会

テーマ 生きている憲法のかたち~護憲・改憲・多様な意識~
日時 3月15日(金)17:00~19:00
会場 主婦会館プラザエフ B2クラルテ
参加 106名

2018年に論議された漫画などの海賊版サイト対策問題は、ブロッキング手法が、悪質な海賊版サイトにアクセスできなくなるというだけでなく、悪質なサイトを利用しない大多数の利用行為や行き先も監視することに繋がり、憲法21条第2項に抵触するのではないかという、私たちのくらしの中の憲法問題の一つです。憲法21条では、表現の自由と通信秘密が保障されています。

日本国憲法の中で一番重要なのは「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求権に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とある13条です。すべての法の基本となっており、憲法自体を貫く理念です。

日本国憲法は硬性憲法であり変えるのが難しい。しかし、憲法とて絶対変えられないものではないです。変えるか守るかに意識が集中しがちですが、具体的な提案内容が問題なのです。憲法改正というと「9条」改正で論議されることが多く、「改正したい人」は9条の条文が変わらないとダメなのか、「変えたくない人」条文か変わらなければいいのか。

憲法論議が有意義なものとなる条件として、

  • 憲法を改正する・しないことを自己目的化しないこと。
  • 「立憲主義」を維持しそれを発展させること。
  • 憲法実現のうち何を具体的に確認・変更するのかを開らかにし、幅広い観点から論議を尽くすこと。

と話されました。