[神奈川県消団連] パリ協定に基づく長期戦略について

2019年05月28日

神奈川県消費者団体連絡会
事務局長 小林 正明

地球温暖化対策の国際的なルール「パリ協定」は、すべての国が今世紀後半に向けた長期の温暖化対策計画を策定し、2020年までに国連に提出することを求めています。

日本が地球温暖化対策に積極的に取り組み、パリ協定を確実に実現する世界の牽引者となることを願い意見を提出します。

1.日本のゴールを、国内削減のみでCO2の実質排出ゼロとして明確化するべきです。

最終到達点として「脱炭素社会」こそ掲げているものの、長期目標が「2050年までに80%削減する」に留まっているようでは、日本の「やる気」を疑います。

IPCCは1.5℃特別報告書において、「地球温暖化が現在の度合いで続けば、 2030年から2052年の間に工業化以前の水準より1.5℃上昇する可能性が高い」「早ければ2030年にも1.5℃まで上昇し、今世紀後半には3℃まで上昇する可能性が高い」と警鐘を鳴らしています。私たちのとるべきスタンスは、パリ協定理念の根底にある「気候正義」を踏まえ、気候変動への責任を果たし、途上国の人々との不公平を正し、課題を次世代に先送りしないことです。従って、日本のゴールは、国内削減のみでCO2の実質排出ゼロであるべきです。

2.原子力発電と決別すべきです。

私たちは東海村JCO臨界事故や東京電力福島第一原発事故の悲惨な経験をしてきました。原子力発電がCO2を排出しないのは運転時のみです。原子力発電は常に被爆労働を前提としており、また過酷事故に伴う放射能汚染や核廃棄物の問題など解決策のない深刻で重要な問題を抱えています。

そもそも日本は巨大地震や火山噴火が続発して形成されてきたプレート4枚がひしめき合う列島であり、国民のくらしや命を考えるならば、原子力発電の選択の余地はありません。

「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)(案)」において、2050年には原発は再稼働されていることが既成事実であるかのような表記は、国民のくらしや命をないがしろにするものです。

また、第5次エネルギー基本計画・エネルギーミックスについても、見直すことを明確にするべきです。

3.発電部門のめざすべき数値目標は、「再生可能エネルギー100%の達成」です。

パリ協定を実現するために、技術革新により省エネルギーを徹底し、再生可能な自然エネルギーを飛躍的に拡大させ、石炭火力発電から脱却し、原子力発電から脱却して、2050年までに目指すべき数値目標は、「発電部門は100%再生可能エネルギーで賄う」ことを明記すべきです。

4.石炭火力発電から脱却することが必要です。

日本には約4300万kWの石炭火力発電所があり、更に近年に稼働したものと計画中のものを合わせると約1600kWになります。これでは 2050年までの日本の脱炭素化は不可能です。石炭火力発電所から排出された二酸化炭素を回収・貯留(CCS)する技術開発について触れていますが、CCSは商業利用の見通しが立っておらず地震大国の日本で採用するには慎重な検討が必要です。

世界の投資家は、化石燃料産業や石炭産業から、すでに投資している金融資産を引き揚げることによって投資の脱炭素化を図る方向で動いています。日本の方向は時代錯誤です。