米統合参謀本部の「核作戦」文書に抗議する

2019年08月01日

神奈川県生活協同組合連合会
代表理事会長 當具 伸一

〜米国は核兵器廃絶を求めるヒバクシャと世界の声を聞け〜

米軍が先月、核兵器使用を想定した新指針(6月11日付の米統合参謀本部文書「核作戦」)をまとめたことが報道されました。

核作戦では、「米核戦力は『力による平和』という米国の国家目標に資する」「核使用やその脅しは地上作戦に重大な影響を与え得る。核使用は戦闘領域を根本から変え、司令官が紛争でどう勝利するかを左右する状況をつくり出す」と、核使用の効用を力説しています。更に、核爆発後の放射線環境下で地上戦をどう継続するかなどの課題についても、核戦力を通常兵力と共同運用する重要性に触れ、「陸上部隊や特殊作戦部隊は核爆発後の放射線環境下でも、全ての作戦を遂行する能力を保持しなければならない」とし、核戦争下での部隊能力の強化を述べています。

米国は2017年2月に、中長期の新たな核戦略「核態勢の見直し」により、核の先制不使用も一時検討するなど「核の役割低減」を目指したオバマ前政権からの方針転換を明確にし、核兵器を「使える兵器」として役割拡大を目指す方針を表明しました。実験などを通じて核戦力の近代化を進めるとともに、「低出力核」と呼ばれる「威力を抑えた(=使い勝手の良い)」核兵器の増強などを進めています。核安全保障局(NNSA)は、今年2月、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に搭載する低出力核弾頭の製造を開始し、この10月には海軍に引き渡す予定です。

この間の一連の「より使いやすい核」の開発・導入と核戦闘の準備の動きを深く憂慮し、強く抗議します。

国連では、1994年の第49回総会から毎年連続して核兵器廃絶決議を採択しています。この間の決議では、核兵器の使用がもたらす悲惨な人道的結末を憂慮し、全ての国が「核兵器なき世界」の実現をめざしてさらなる措置を講じる必要性を訴えています。

2017年7月には、核兵器禁止条約が122カ国の賛成を得て採択され、2018年12月の第73回総会本会議においては、核兵器を法的に禁止する核兵器禁止条約を歓迎し、各国に早期の署名、批准を求める決議が126か国の賛成多数で採択されました。引き続き国連加盟国の多数が核兵器禁止条約を支持していることは明確で、条約の早期発効が望まれています。

更に米国内においても、3月5日、首都ワシントンDC議会が、核戦争の危険を防ぎ核兵器廃絶を連邦政府・議会に求める決を全会一致で採択しており、同様の決議はカリフォルニア州議会、ニュージャージー州議会、ロサンゼル市、ボルティモア市と広がっています。

7月の全米市長会議の年次総会は、昨年の核兵器禁止条約への支持に引き続き、条約を改めて支持し、2020年の大統領選の候補者に向けて、核兵器廃絶の交渉で指導力発揮を求める決議を採択しました。

米国は、自国内そして世界の核兵器廃絶の声を真摯に受け止めるべきです。

私たちは、核兵器廃絶と被爆者援護を共通の願いとして、被爆者とともに平和を求める活動をすすめています。

ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名(ヒバクシャ国際署名)は、神奈川県内33県知事・市町村長も署名され、累計941万5,025筆(4月末現在)となり、被爆者代表によりNPT運用再検討会議第3回準備委員会議長に届けられました。

核兵器を廃絶し恒久平和を実現することは、戦争被爆国日本の悲願であり、また基地県でもある神奈川県民の強い願いです。

原爆は人類の歴史を終わりにしかねないものであり、人類と原爆とは絶対に共存できません。

「核兵器の使用と威嚇は国際法に違反する」とする1996年の国際司法裁判所の勧告的意見を真摯に受け止め、米国こそが率先して「核兵器のない平和な世界の実現」に向けて明確な行動を取ることを強く求めます。