「第4期消費者基本計画(案)」に関する意見(神奈川県消団連)

2020年01月22日

消費者庁消費者政策課御中

「第4期消費者基本計画(案)」に関する意見

神奈川県消費者団体連絡会

 

「第4期消費者基本計画(案)」について以下の通り意見を申し述べます。

1.これまでの消費者政策の展開に関する記述を拡充してください。(全般)

消費者基本計画は、消費者政策の推進に関する基本的な計画であることから、消費者基本法に定められている事項並びに消費者庁及び消費者委員会設置法の附則・附帯決議等で確認された課題について、この間の取り組みをふまえた現状と課題を整理したうえで計画化されるべきものと考えます。そうでなければ計画に説得力がなく、まさしく「絵に描いた餅」となりかねません。

しかるに、この間の消費者政策の展開については、第1章の2.において「消費者庁・消費者委員会設置とその後10年間の消費者政策の展開」の1ページのみの記述となっており、さらにその内容も限定されたものとなっています。

少なくとも、消費者委員会の取り組みに関する記述や、地方消費者行政の財政問題、消費者団体の育成等については、この間の取り組みをふまえた現状と課題に関する記述を拡充してください。

 

2.消費者行政や消費者庁の現状の体制・力量を前提とせず、消費生活の安全・安心のために必要な施策がフォローされた消費者基本計画にしてください。(全般)

消費者基本計画は、消費者政策推進の基盤となる大変重要な計画ですが、今回の「第4期消費者基本計画(案)」では、以下記述するように、「着実な法整備」「すき間事案への対応」「地方消費者行政や適格消費者団体への財政支援」などについて、きわめて不十分な記述となっています。しかしこれらの課題への対応こそ、「消費者行政の司令塔」として消費者庁に期待されるものです。計画全般を通じて、消費者庁の現状の体制・力量を前提とするのではなく、消費生活の安全・安心のために必要な施策がフォローされた内容としてください。

 

. 消費者の位置づけに関する記述については見直してください。(第1章1.)

第1章1.の21行目で消費者問題の歴史を振り返りながら、「消費者は行政に『保護される者』として受動的に捉えられてきたが、1990年代以降は規制緩和の流れを背景に自己責任や市場機能の発揮がうたわれ、消費者の利益の保護の在り方が問われるようになった」と記述されています。消費者に関する記述は、第1章1.の35行目にもあり、消費者基本法では「消費者の位置づけを『保護される者』から『自立した主体』へと転換」したと記述されています。

消費者の位置づけの問題は、消費者基本法策定過程でも論点となった点であり、現在でも議論があるテーマです。懸念されるのは、「自己責任」や「保護から自立へ」を口実にして消費者行政の役割を二次的・補完的なものに後退させるのではないかということです。

消費者基本法はその基本理念で規定されている通り、「消費者と事業者との間の情報の質及び交渉力等の格差」を背景に、消費者権利の擁護及び増進のために策定されたものであることから、上記の「自己責任」ないし「自立した主体」という言葉・用語を無限定に使用すべきではないと考えます。

 

4.消費者被害の防止に関して、「厳格な法執行」に加え、「着実な法整備」の記述を加筆してください。(第3章2(1)①)

昨年8月に意見募集が行われた「第4期消費者基本計画の構成(案)」には、「政策推進の基本的な方向」の中に「着実な法整備と執行力の強化」が位置づけられていましたが、今回の案では「着実な法整備」の記述が落ちています。消費者契約法や消費者裁判手続特例法など、法律の見直し期限が到来している課題があります。また、この間の預託商法被害の続発をふまえて預託法改正が検討されるべきです。特定商取引法についても、通信販売の定期購入をめぐる被害の多発に対応した法改正(民亊効の付与)や、被害実態をふまえた適用除外分野の見直しなども必要と考えます。このように法整備に係る課題は多く、「着実な法整備」の記述を加筆してください。

 

5.地方消費者行政の財政問題について記述を加筆してください。(第4章(3)および第5章5(3))

今回の案では、「地方消費者行政強化交付金」等の財政支援と地方公共団体の首長等への働きかけ、広域連携や官民連携などの行政手法の工夫等があげられています。

しかしながら、消費者契約法改正にあたっての附帯決議では、「地方消費者行政の体制の充実・強化のため、恒久的な財政支援策を検討する」ことが求められており、上記の計画は求められている支援策にマッチしていません。また、消費者庁「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」報告書においても、「国においては、…これまでの取組(地方消費者行政強化作戦)に代わる新たなアプローチ・目標設定を検討すべきであり、…必要な財源の確保も含めて検討すべき」としています。

人口減少や高齢化は大都市圏より地方で先行することから、地方消費者行政の維持・強化にはこれまでの取組とは質的に異なる枠組みが必要となると考えます。上記の趣旨を踏まえた記述を加筆してください。

 

6.いわゆる「すき間事案」に消費者庁が積極的に対応する旨の記述を加筆してください。(第4章(4))

消費者庁「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」報告書では、「取引の多様化・複雑化等への迅速・的確な対応」の項で、「どの省庁等の所掌にも属さない事業・サービスに対しての積極的対応」が挙げられていました。

これに対し、今回の案ではすき間事案への対応について、「事業者・事業者団体の自主規制に消費者行政の視点を反映する取組を進める」という記述にとどまっていますが、消費者庁が「消費者行政の司令塔」として、消費者安全法を活用して積極的に対応する旨も加筆してください。

 

7.「適格消費者団体への財政支援」を加筆してください。(第5章1(4))

今回の案では適格消費者団体への財政支援に関する記述としては、「団体を支援する民間基金の周知・広報」のみとなっています。

しかしながら、消費者庁及び消費者委員会設置法の附則では、「必要な資金の確保その他の適格消費者団体に対する支援の在り方について見直しを行い、必要な措置を講ずる」とされています。また消費者契約法等改正にあたっての附帯決議においても財政支援の必要性について記載されています。

適格消費者団体の財政問題はきわめて深刻であることから、財政支援を計画の中に位置づけ加筆してください。

 

8.「消費者団体の活性化・機能強化」について、より具体的に加筆してください。(第5章5(1))

今回の案では、「構成員の高齢化等による活動の停滞も一部にみられることから、その活動の活性化は、消費者行政の推進に当たっても重要」と記述されておりますが、計画の内容は、いずれも一般的な中身にとどまっています。

消費者庁及び消費者委員会設置法の附則では、「活動のための施設や資金の確保等の支援のあり方について検討を行い、必要な措置を講ずること」とされています。また、消費者庁「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」報告書では、「時代の状況に対応した消費者団体の活性化については、消費者団体と行政、事業者が連携して政策的に検討する場が必要である」と記述されています。

これらの指摘を踏まえて具体的な施策の内容について検討・加筆をお願いします。

 

以上