【緊急募金のお願い】原爆の図丸木美術館 コロナ危機を乗り越えるために

2020年05月31日

埼玉県東松山市にある原爆の図丸木美術館は、画家の丸木位里・丸木俊夫妻が、共同制作《原爆の図》を、誰でもいつでもここにさえ来れば見ることができるようにという思いを込めて建てた美術館です。

丸木夫妻は、原子爆弾が投下された直後の広島にいち早くかけつけ、戦後の米軍占領下、原爆被害の報道が厳しい検閲を受けていた時期に《原爆の図》連作を描きはじめました。
そして日本全国を巡回し、公民館や寺院、学校の体育館などで展覧会を開催。被爆の実情を広く伝えました。その後も、戦争や公害など、人間が人間を傷つけ破壊することの愚かさを生涯かけて描き続けました。

原爆の図丸木美術館は、1967年の開館当初から多くの市民の力に支えられて歴史をつないできました。しかし今、これまでになかった危機に直面しています。新型コロナウイルス感染拡大に対する外出自粛要請により2020年3月頃から入館者が減少し、4月9日には臨時休館しなければならなくなりました。また、3月以降に予定されていた学校などの団体来館、美術館でのイベント、館外巡回展も次々とキャンセルとなりました。

丸木美術館は大きな助成金がないため、日頃の入館料は大切な収入源です。それがない状況が長期間続くことは、存続に関わる問題となっています。
ようやく新型コロナウイルス感染拡大防止への対応と事務作業を含めた諸準備を進めたうえで、6月19日(火)より再開館する予定までこぎつけることができましたが、存続の危機を乗り越え、ここにくれば「原爆の図」が見られる場所として存続し続けるために、みなさまのご支援をお願いいたします。

具体的には、運営のために年間2500万円ほどの経費が必要となります。そのうち入館料収入は毎年1000万円ほど。その他に作品の館外貸出料、グッズの売り上げ、友の会会費や寄付収入が運営を支えています。1ヵ月平均にすると約200万円の収入が必要です。

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◎「原爆の図丸木美術館」という場を残すために

現在、私たちはウイルス感染の拡大を防ぎ、大切な人たちの命を守るために、生活を制限して人との距離を保たなければなりません。それはとても重要なことですが、「原爆の図」をはじめとする丸木位里、丸木俊の絵や、位里の母である丸木スマの絵には、命への深いまなざしがあります。感染の収束後にも、こうした絵を、誰でもいつでも見て、ものを思うことのできる場所は、必要とされ続けるでしょう。芸術や文化における大切な役割のひとつが、この丸木美術館にあると考えます。
丸木美術館は、行政主導ではなく、「原爆の図」を中心に、市民の力によって50年以上の歳月をかけて築き上げられてきた大切な「場」です(丸木美術館の活動について、詳しくはこちらのウェブサイトをご覧ください)。この小さな灯火を消さないよう、ご協力いただけると幸いです。

◎原爆の図丸木美術館学芸員からのメッセージ

人と人とがつながり、助け合う。同じ場所を共有して、同じものを見て語り合う。そんな社会の基本が断たれてしまう日々の中で、丸木美術館という、無数の人びとが支えてきた「場」の意味を考えています。歴史をさかのぼれば、平和な世の爛熟だけでなく、厳しい時代にあっても人は表現を手放さなかったことがわかります。人間の心をえぐるような痛みや、鋭い社会批評を通して世界の本質に近づくことも、文化の大切な役割です。よろこびも、かなしみも、生きるための力になります。現在、より厳しい状況に直面している方々も多い状況のなかで、支援の声をあげることへのためらいもあるのですが、次の世代に「原爆の図」のある美術館をつなぐため、まずはお気持ちを持ってくださる方との連携を大切にしていきたいと思います。どうぞご協力をよろしくお願いいたします。

丸木美術館学芸員 岡村幸宣