核兵器禁止条約の批准国が50か国となり、条約が発効する状況を迎えて(原爆被災者の会 会長声明)

2020年11月03日

神奈川県原爆被災者の会
会長 丸山 進

 2017年7月7日に122か国の賛成により採択された核兵器禁止条約が、発効に必要な批准書の寄託国数が50か国となり、いよいよ2021年1月22日に発効します。条約の発効により、国際社会の規範として核兵器の開発・実験・保有・使用・核兵器による威嚇などあらゆる活動が禁止され、核兵器は違法化されます。

生きていてよかった。
核兵器を禁止する確かな光の道が開かれたことを、被爆者はあふれる感激の涙とともに喜びあっています。私たちは毎年、大船観音寺の原爆犠牲者慰霊碑の前で慰霊祭を行ってきましたが、いつも先輩被爆者の皆さまに「核兵器を廃絶することができました」とご報告できない無念を噛みしめておりました。来年の慰霊祭では、あの原爆投下で命を奪われた数十万の原爆死没者の皆さま、困難ななか被爆者運動を進められた先輩たちに、「核兵器禁止条約が発効し、核兵器が違法化されました」と報告できます。
そしてあわせて、今日まで核兵器のない戦争もない平和な世界を求める被爆者の運動を理解し、支えて下さった県民の皆さまや友誼団体の皆さまに、深い敬意と感謝をお伝えします。この間取り組んだヒバクシャ国際署名は県内で93万9,088筆となり、核兵器廃絶を求める世論づくりの大きな力となりました。ありがとうございました。

50年前に制定されたNPT(核兵器不拡散条約)と、来年1月22日に発効する核兵器禁止条約は、ともに核兵器廃絶に不可欠な条約です。核兵器保有国も核依存国も、虚構の核抑止論のくびきから脱して、この枠組みを有効に働かせるために行動すべきです。来年に延期されたNPT再検討会議では、核軍縮を誠実に交渉する義務を踏まえ、対話を継続し、核兵器に頼らない安全保障体制の構築に向けて力を尽くすことを求めます。

そしてわが日本政府には、「核保有国と非核保有国との橋渡し役をしっかりと果たす」ために、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約の締約国となり、核兵器廃絶の努力を世界の先頭に立って果たすことを求めます。「橋渡し役をしっかりと果たす」と言いながら、実際は米国の核兵器に依存し続ける態度こそが、被爆者を失望させ日本外交が世界の国々の信頼を得ることができていない理由であることを知るべきです。

私たち被爆者の願いは、「ふたたび被爆者をつくらない」ことです。
被爆者はこれからも核兵器のない戦争もない平和な世界を求め、運動していきます。