「安保3文書」の敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有に反対します

2023年01月18日

神奈川県生活協同組合連合会
代表理事会長 當具 伸一

2022年12月16日、岸田内閣は、新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画(以下、「安保3文書」)を閣議決定しました。この「安保3文書」には、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有が明記されています。敵基地攻撃能力とは、相手の領域内で攻撃できる能力であり、従来の政府の憲法解釈においても許されないとされてきたものです。
さらに、そのような従来の憲法解釈の変更を、国民の代表者で構成される国会での議論を経ずに閣議決定のみで行うことは、国民主権ならびに国会中心主義を軽視するものです。
神奈川県生協連は、「平和とよりよい生活のために」をスローガンに掲げています。その根底にあるのは、二度と戦争を起こしてはいけない、起こさせてはいけないという強い思いです。平和を守る抑止力は、決して敵基地攻撃能力(反撃力)などではなく、対話による外交政策です。
私たちは、いのちとくらしを尊ぶ平和な社会を求め、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有に反対します。

1.「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保持は日本国憲法に違反します

「安保3文書」は、相手国のミサイル発射拠点を直接たたく敵基地攻撃能力について「相手の領域において、わが国が有効な反撃を加えることを可能とする・・・自衛隊の能力」と規定し、そうした「反撃能力を保有する必要がある」と明記しました。
しかし、これは、従来の政府の憲法解釈においても、自衛権の発動の要件、とりわけ実力の行使は日本に対する外国からの武力攻撃の排除に必要な最小限度のものに限られ、他国の領域における武力の行使は基本的に許されないとする原則に反し、また、相手国の領域に直接的な脅威を与える攻撃的兵器の保有として「戦力」の保持に該当することも明らかであって、憲法9条に違反するものだと考えます。

 

2.集団的自衛権の行使を通じて日本が戦争当事国になる危険性が増します

さらに、2015年に安倍内閣のもとで、いわゆる安保法制が施行されている現状において、集団的自衛権の行使などを通じて日本が戦争当事国になる危険が拡大しています。その安保法制のもとで「敵基地攻撃能力(反撃能力)」を保有した場合、それが他国のために用いられ戦争に突入する危険性がより一層高くなると考えられます。

 

3.防衛費の倍増により暮らしの破壊につながります

「安保3文書」には、敵基地攻撃能力(反撃能力)」を保有するための防衛費として、今後5年間で総額43兆円もの税金を投入することが明記されました。ロシアによるウクライナ侵攻等の影響や円安の影響にもとづく物価の上昇や、新型コロナウイルスによる経済的打撃等により苦しんでいる国民が多くいる中で、防衛費に多額の税金を投入することに対して国民の納得は得られていません。

 

4.国民に対する説明と国会での論議がなされていません

国民に対して十分な説明をせず、国民の代表者で構成される国会での議論を経ずに閣議決定のみにより、従来の憲法解釈を覆し多額の税金の投入を決定することは、国民主権、国会中心主義、及び財政民主主義に反するものです。

以上