[神奈川県弁護士会] 川崎市・相模原市に対して、ヘイトスピーチ対策として実効性のある条例の制定を支持する会長声明

2019年06月30日

2017年2月川崎市の福田紀彦市長が川崎市議会において、人権を幅広く守る条例(以下「本条例」という。)の制定に向けた調査に着手したことを明らかにしたことを受け、当会も、同年3月本条例制定の動きを全面的に支持するとともに、本条例中に人種差別を禁止し多文化共生を推進する包括的な内容を盛り込むよう強く求める会長声明を発した。

その後、川崎市は、同年11月「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に基づく『公の施設』利用許可に関するガイドライン」を策定・公表し、2018年3月31日から当ガイドラインを施行・運用している。

しかしながら、一方で、この間特定の国籍の外国人などを排斥し、差別を助長する趣旨の、いわゆるヘイトスピーチなど、外国人を巡る人権問題について憂慮すべき状況は改善されておらず、殊に、インターネット上のヘイトスピーチ被害は拡大増殖を続けている。そこで、当会は、このインターネット上のヘイトスピーチに対しても、2018年1月「インターネット上のヘイトスピーチによる人権侵害に対して警鐘を鳴らすとともに、その是正に向け関係者の取り組みを求める会長談話」を発し、当該談話中においても、本条例を早急に制定するよう求めていた。

そうしたところ、川崎市は、本年3月あらゆる差別を包括的に禁止する条例の骨子案を作成公表したが、他方、同じ時期に行われた統一地方選挙においては、選挙運動に名を借りた確信犯的なヘイトスピーチが繰り返されたと報道されており、実効性を持った条例の制定がなければ、これを食い止めることのできないことはもはや厳然たる事実になったともいえる。

上記骨子案においては、「何人も、不当な差別を禁止」することを謳い、「差別的言動の解消に向けた取組の推進」の項目の中に「実効性の確保を図るための施策」として、①「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の禁止に係る施策」と、②市としてネット上の監視 や削除要請などを行うことを念頭においたと考えられる「インターネットを利用する方法による表現活動に係る施策」という具体的な2項目を掲げているが、上記のような被害の実態に照らせば、本条例において、この2項目の実効性を持たせる方策を検討することは重要であり、特に、①の点で、本条例にヘイトスピーチ禁止に向けた真の実効性を持たせるためには、諸外国の立法例にあるように、一定の制裁、具体的には、氏名又は名称の公表、当該行為者との間で、市の業務の委託、提携などを行わないなどの措置のほか、表現の自由には十分に配慮しつつ、特に悪質なものについては刑罰や行政罰を条例自体において整備することが不可避であると考えられる。

この点、同じように統一地方選挙において一部の立候補者と支援者が開いた街頭演説の場で、特定の人種や民族への差別をあおる言葉が公然と叫ばれたとされる相模原市においても、同市の本村賢太郎市長が4月の就任会見で、ヘイトスピーチを規制する条例づくりに前向きな意向を表明した。

当会は、相模原市の姿勢についても、川崎市同様これを強く支持すると共に、両市が制定を目指す条例において、表現行為につき可能な限り制限的抑制的でないことは当然ではあるものの、実質的違法性の強い事象に対象を限定し、かつ、適用範囲を明確にするなどの一定の配慮をしつつ、上記のように、実効性を持った条例制定がなされることを求める。

以上

2019年6月13日
神奈川県弁護士会
会長 伊藤 信吾