多核種除去設備等処理水の取扱いに関する意見(神奈川県消団連)

2020年04月22日

神奈川県消費者団体連絡会
事務局長 庭野 文雄
横浜市港北区新横浜2-6-13
新横浜ステーションビル9階
045-473-1031

 東京電力福島第一原発事故で放出された放射能は、福島県をはじめ東日本への大きな災禍をもたらし、今なお健康面及び精神的、経済的な負担となり、農林水産物や観光業を中心として風評被害の影響をもたらしています。

こうした状況の中、福島第一原発では廃炉作業が進められており、汚染水対策の一つである多核種除去設備(以下「ALPS」という)等で処理した汚染水(以下「ALPS処理水」という)についても検討が進められています。2020年2月10日、経済産業省資源エネルギー庁の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」の報告書(以下「報告書」という)では、処理水については、処理して海洋放出することないし大気へ放出することが現実的な選択肢であるという結論が示されています。

しかし、今回の提案に至った過程で海洋放出及び大気放出以外の方法に関して十分な検討が、国民の意見をふまえた形でなされたとは言えないと考えており、今回の「報告書」の内容には反対せざるを得ません。以下に理由を述べます。

(1)処理水は陸上で保管することを求めます

2013年12月に国際原子力機関(IAEA)調査団から、「ALPS処理水」の取扱いについて「あらゆる選択肢を検証するべき」との助言があったにもかかわらず、地元住民からの要望が最も強かったタンクでの貯蔵継続(陸上保管)は、小委員会で検討した5つの選択肢から外されました。この取扱いが非常に不公平であり、「報告書」の信用性に対する疑念を感じざるを得ません。

さらに、「報告書」にもふれている通り、現在タンクに保管されている「ALPS処理水」の約7割には、トリチウム以外の放射性物質が、環境へ放出する際の基準を超えて含まれています。小委員会では、環境中に放出する場合には二次処理を行い、規制基準を満たすことを前提に議論されています。しかしながら、その基準が守られているかどうかを確認する仕組みが明確になっていない中では、地域の方々や関係者の方々の納得や、風評への影響を抑えることはできないと考えるべきです。

陸上保管について「報告書」では納得できる検討が行われていませんが、タンクの補強ないし改造、増設、あるいは処理水を固化する等、検討すべき方法はあります。そのための周辺の土地の確保にあたって周辺住民・自治体の理解を得ることは難しくないと考えます。陸上保管の方法を改めて検討することを要望します。

(2)地元の住民との合意を得る努力が不十分です

朝日新聞および福島放送が2月下旬に行った世論調査によれば、福島の有権者のうち、処理水を薄めて海に流すことに57%が「反対」と答えています。また、福島県の地元紙である福島民報は、「本県沖や本県上空が最初、あるいは本県のみが実施場所とされるのでは、さらなる風評につながり、絶対に許されず、認められない」としています。

4月に行われた「報告書」に対する意見を「伺う場」においても、県漁連と森林組合連合会は反対の立場を表明されています。このままでは、国策として進めてきた原発が起こした事故の尻拭いを、福島県をはじめ東日本に押し付けることになってしまいます。

地元の住民の合意が得られない中での海洋放出あるいは大気放出には反対します。

 

以上