「消費者基本計画工程表」素案に関する意見(神奈川県消団連)

2020年06月01日

神奈川県消費者団体連絡会
事務局長 庭野 文雄

「消費者基本計画」は5年間の消費者行政の骨格を決め、各分野の施策を具体的に進めるための重要な計画です。消費者の権利を守り、「消費者が主役となる社会」の実現のために活動している消費者団体の立場から、工程表に対して意見を述べます。

<全体を通じて>

本工程表は、具体的な施策について検証可能な形で体系的・包括的に推進するために策定されるもので、そのために対象期間内の取組予定及びKPI(重要業績評価指標)を設定すると記載されています。しかしながら、今後の取組予定に5か年の年度表示がありますが、取り組み内容については年度ごとに記述されていない項目が多くなっています。また、KPIについても、施策項目の業績評価指標として適切な指標となっていないと考えられるものもあります。

今回の工程表策定段階で可能な見直しを行うとともに、毎年度、KPIの指標自体も含めて見直しを進めてください。

<個別の項目に関して>

Ⅰ 消費者被害の防止

(1)消費者の安全の確保

①事故の未然防止のための取組

エ 子供の不慮の事故を防止するための取組

「子供の不慮の事故を防止するための取組」のKPIが、Twitterのフォロワー数とメールの登録者数というのは不十分だと考えます。「子どもを事故から守る!プロジェクト」で検討されている施策内容を含めて、子どもの事故の数値目標の設定や、保護者や教育者への周知啓発等の施策の年度別具体化とKPIの設定が必要です。

④食品の安全性の確保

エ 食品の安全性に関するリスクコミュニケーションの推進

食品の安全性に関するリスクコミュニケーションを、関係府省庁等で連携しつつ継続的に推進することは大変重要ですが、その際のKPIが参加者の理解度のみとなっています。参加人数(できれば、初参加の人数や年齢別等の階層別の人数など)もKPIに加えてください。

(2)取引及び表示の適正化並びに消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保

⑤食品表示による適正な情報提供及び関係法令の厳正な運用

食品の機能性等を表示する制度に関して、KPIは「事業者への措置件数」のみとなっていますが、消費者への広報や教育、理解度についてもKPIに加えてください。

(4)消費者の苦情処理、紛争解決のための枠組みの整備

①消費者団体訴訟制度の推進

適格消費者団体等への支援として、「設立に向けた取組の支援を実施するとしていますが、「消費者庁及び消費者委員会設置法」の附則が「差止請求関係業務の遂行に必要な資金の確保」等の必要な措置を求めていることから、活動を継続するための財政面での支援について施策に付け加えてください。

 

Ⅱ 消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進

(2)環境の保全に資する消費者と事業者との連携・協働

②海洋プラスチックごみ削減に向けた国民運動(「プラスチック・スマート」キャンペーン)の推進

海洋プラスチックごみ削減に向けた国民運動(「プラスチック・スマート」キャンペーン)のKPIがキャンペーン取組登録数となっています。国民運動として展開するのであれば、国民の認知度や行動変容などについての指標をKPIとして設定すべきです。

④生物多様性の保全と持続可能な利用の促進

生物多様性の保全と持続可能な利用の促進では、「事業活動に生物多様性保全の概念を盛り込んでいる企業の割合」がKPIとされていますが、消費者の「MY行動宣言」についてもKPIに加えてください。

(3)その他の持続可能な消費社会の形成に資する消費者と事業者との連携・協働

①エシカル消費の普及啓発

エシカル消費の普及啓発について、KPIがエシカル消費の認知度と水産エコラベルの認証数となっています。エシカル消費に結びつく商品としては水産エコラベル以外にも、「フェアトレード」や「FSC認証」、「レインフォレスト・アライアンス認証」なども含まれています。それらの商品についても消費者に周知し、その認知度をKPIに追加してください。

 

Ⅳ 消費者教育の推進及び消費者への情報提供の実施

(1)消費者教育の推進

②学校における消費者教育の推進

学校における消費者教育の推進について、参加人数や教材の活用状況等がKPIとして設定されていますが、大事なのは児童生徒がどれだけ理解したかだと考えますので、理解度をKPIに追加してください。そのことが、教材や教育の進め方にフィードバックされることになると考えます。

 

Ⅴ 消費者行政を推進するための体制整備

(1)消費者の意見の反映と消費者政策の透明性の確保

②消費者団体との連携及び支援等

消費者団体との連携・支援に関する施策内容については、消費者団体が活躍できる場や意見交換の機会の提供にとどまらず、消費者団体の設立や活動の支援、広報活動への協力など、もう一歩踏み込んだ内容を検討してください。