神奈川県消団連が意見を出しました 日本学術会議会員任命拒否に抗議し撤回を求めます

2020年10月15日

神奈川県消費者団体連絡会

日本学術会議が新会員として推薦した105名の研究者のうち6名が、内閣総理大臣により任命されなかったことが明らかになりました。日本学術会議は10月2日に総会を開き、任命しなかった理由の開示と、6名をあらためて任命するよう求める要望書を10月3日、内閣総理大臣に提出しました。
私たちは、この要望書を支持し、今回の任命拒否に対して抗議し撤回を求めます。

日本学術会議は、戦争遂行に科学者が協力した戦前の苦い歴史の反省から、「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、我が国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」(日本学術会議法前文)ことを使命として設立されました。内閣の所轄でありながら、憲法23条の「学問の自由」を背景に、「独立」(法3条)して職務を行う機関であり、その独立性・自律性を日本政府及び歴代の首相も認めてきました。

今回の任命拒否について政府は、法7条2項に「内閣総理大臣が任命する」となっていることを根拠に任命拒否が可能だとしています。しかしながら、法7条2項は、その前段に「第17条の規定(優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦する)による推薦に基づいて」となっており内閣総理大臣の任命権は形式的なものだと考えられます。このことは、政府自身がこれまで「推薦制は形だけの推薦制であって、学会の方から推薦いただいたものは拒否しない」と国会で答弁されていたことと符合します。
今回の任命拒否はこれまでの法律解釈を政府が一方的に変更するものです。恣意的な法律解釈の変更は、民主主義を危機に陥れるものであり見過ごすことはできません。法の趣旨とこれまでの解釈をふまえた対応を求めます。

今回の任命を拒否された6名の中には、集団的自衛権を認めた安保関連法、いわゆる戦争法や組織的犯罪処罰法(共謀罪)を批判してきた学者が多く含まれています。政府が意図する政策へ批判的な学者を除外しようとする措置だったと見られてもやむを得ず、日本学術会議の設立趣旨ならびに憲法が保障する学問の自由を危機に陥れるものです。
政府は、今回の任命拒否あたって、「専門領域での業績にとらわれない広い視野にたって…しっかり精査していくのは当然のこと」と述べたと伝えられています。しかし、各専門領域での研究者による評価を政府が覆すことは学問の自由の侵害そのものです。今回の事態は、今後、学問の自由以外の市民的自由・権利への侵害やさまざまな組織・制度に対する政府の介入につながりかねない危険性を持っていると考えます。

さらに重大な問題だと考えられるのは、上記のような疑問や批判に対して政府から十分な説明がなされていない点です。菅首相は「総合的、俯瞰的な活動を求める観点から判断した」などと述べるにとどまっており、任命を拒否した理由についてそれ以上の説明をしていません。主権者である国民が納得できない決定など、民主国家ではあっていいはずがありません。また、拒否を決めたプロセスについても明らかにすべきです。憶測も含めた多くの混迷した議論がなされているのは、政府による説明責任が果たされていない結果です。

以上のことから、私たちは今回の任命拒否に対して抗議するとともに、任命しなかった理由の開示と、6名をあらためて任命することを求めるものです。

以上